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2024年末規制後の実質価格はいくらになる?スマホレンタルの仕組みと金額の定義を徹底解説

スマホ割引規制(電気通信事業法施行規則・運用に関するガイドライン)の改正が2024年12月26日に迫っている。

今回のルール変更は、返却プログラム利用した実質レンタル方式の規制が主な論点だ。

本記事では、「レンタル方式」の仕組みについて詳しく解説するとともに、規制後の価格がいくらになるのか試算する。

「レンタル方式」の考え方と各金額の定義

近年、スマホの買い方として定番の残価設定型返却プログラム。NTTドコモの「いつでもカエドキプログラム」やSoftBankの「新トクするサポート」、auの「スマホトクするプログラム」といった名称で提供されている。

細かいルールや返却時期は各社で異なるものの、概ね以下のような価格構成となっている。

端末価格端末の通常販売価格。
割引返却の有無を問わず割引される部分。
実質負担額利用者が支払う代金。①-(②+④)で計算できる。
残価端末の返却を条件に、支払いが免除される部分。
買取等予想価格④残価算出の基となる金額。

例えば、①端末価格100,000円の端末が、②割引20,000円・④残価50,000円で売られていたとしよう。プログラムを使用して端末を割賦購入し、時期到来時に返却した場合、ユーザーは③実質負担額30,000円を払うだけで済む。

最終的に物品を手放すことでお得になることから、実質的なレンタル方式ともいわれる。

⑤買取等予想価格の考え方については後述。

①端末価格

「端末価格」は、通常販売される端末の割引前価格。

通常販売価格の下限は、キャリア(電気通信事業者)によるメーカーからの調達価格となる。

新設される不良在庫の特例等はあるものの、基本的には定価を仕入れ値以下に設定することはできない。

②割引

2023年12月27日以降は、4.4万円まで引ける!

割引は、端末の返却有無に関わらず引かれる金額。

一括購入も含めて、一般的には乗り換え(MNP)が優遇される傾向にある。

当該金額は、端末価格に応じて、最大税込4.4万円。

端末価格割引上限(税抜)
4万円未満2万円
4万円~8万円価格の50%
8万円以上4万円

これに加えて、2024年12月26日以降は、ミリ波端末に限り税込6.05万円まで引けるようになる。

詳細は、以前の記事を参照。

<関連記事>
「スマホ割引規制」見直しへ!レンタル価格は値上げも一括投げ売りが復活か【考察】

なお、割引の金額決定の基準となる元値は、①端末価格ではなく「対照価格」として定義された別の概念を用いる。基本的に取得価格=対照価格となるが、後の調達でより安く仕入れた場合はその額を調達価格にできるといった規定も存在する。

極端な話、例えば、最終仕入にて1台だけ1円だけ仕入れたら、調達価格は1円となってしまう。昨年末の改正案には、潜脱を防ぐために数量で加重平均した仕入値をもって調達価格とする案も示されたが、当該項目は結局削除されている。

③実質負担額

③実質価格 = ①端末価格 - ②割引 - ④残価

実質負担額は、返却プログラム適用の条件を満たした場合に、実際に利用者が支払う金額。

「24円」などとアピールされているのはコレ。

④残価

返却時に支払いが不要になる金額

残価は、返却プログラムを用いて端末を分割購入し、一定期間後に返却した際に、支払が免除される額を指す。

必ずしも、次項⑤の買取等予想価格と一致する必要はない。ただし、④実際に提示する残価と⑤の差額は、割引と見做される。④残価と②割引の合計が、上で示した法定上限割引可能金額を超えなければ、合法となる。

実際に、端末の割引をせずに、その分の金額を残価に割り振る例は多数見られる。

例えば、SoftBankのGoogle Pixel 8aの価格構成は、以下となっている(12月7日時点)。

  • 通常価格 77,760円
  • 割引 0円
  • 負担額 24円
  • 残価 77,736円
  • 25ヶ月目買取等予想価格 38,892円

買取等予想価格より残価が38,844円高く設定されているが、法定上限[通常価格の50%(38,880円)]は超えていないため、問題ない。

こうすることのメリットは、契約種別によらず同価格にできるが故に乗り換え客のみを優遇しない戦略が取れるほか、転売の危険を孕む割引価格での一括購入を防げることにある。

改正後も、この仕組みに変更はないと思われる。

⑤買取等予想価格

今回のルール変更の肝となるのが「買取等予想価格」だ。

買取等予想価格は、将来時点での残存価値の予想額であり、④残価算定の基となる。

規制改正後、④残価は具体的に以下の式で算出される。

残価 = 端末の販売価格 × 残価率 × その他考慮事項

「端末の販売価格」は、販売時点での通常価格(①)である。

その他考慮事項については、ガイドラインにて今後必要なものが生じた場合、総務省はその内容を事前に確認し、反映させることが適当か判断すると記載されており、市場環境の変化等で合理的な理由がある場合に乗じる率と解される。

残価率の算定式は以下。

残価率 = 発売からnか月目の買取平均額 ÷ 各電気通信事業者における販売当初の販売価格

元来、「発売からnか月目の買取平均額」は、各社の裁量により決定されてきた。一部キャリアはフリマにおける個人間売買の実績も含めて計算しており、不当に高い残価設定の主要因であった。算出方法の統一化を図るため、新ガイドラインでは一般社団法人リユースモバイル・ジャパン(RMJ)の公表する数値を用いるように強制される。

分母となる発売当初価格は、発売日から1ヶ月間で最も高い価格と定義されている。

ただし、ガイドライン改正(2024年12月25日)以前に発売された端末は、メーカーの直販の販売当初価格を参照するとしている。直販、いわゆるSIMフリーモデルが存在しない場合は、各電気通信事業者の販売当初の販売価格が用いられる。

規制後の実質価格を試算してみる

ここからは、新規制施行後のレンタル価格がどのように変化するのか試算する。

各月ごとの実質価格は、現時点で公表されている情報を基に、筆者が算出したとりうる下限価格である。

各キャリアがメーカーから幾らで仕入れているか知る術はないため、通常販売価格は記事執筆時点のものを使用。定価自体を値下げした場合は予想の限りではない点にはご留意いただきたい。

実際には、先行同型機種の価格を用いたり、同系統の機種はグループ化したりするため、試算すること自体は無意味。あくまで現在の仕組みと状況が継続した場合の参考値を調査するのみである。

以下の手順で計算。

①RMJが公表する2024年6月までの買取平均額÷販売当初で経過月数ごとの残価率を計算
②将来時点での残価率を線形近似で求める
③販売当初価格×残価率=残価を算出(販売当初価格は改正以前発売の場合は直販価格を利用)
④現在販売価格-割引上限額(価格に応じて22,000円〜60,500円)-返却時期の③残価=下限価格が試算の結果

iPhone 15 128GB

販売価格はSoftBankの130,896円を使用。現在は、MNPかつ2年返却で月々1円・総額24円で提供されている。

規制後は、2025年1月の2年返却価格が6.3万円程度になると予想できる。

年月1年返却
実質価格下限
2年返却
実質価格下限
2024/1241,99261,312
2025/143,60262,921
2025/245,21264,531
2025/346,82266,141
2025/448,43267,751
2025/550,04269,361
2025/651,65270,971
2025/753,26272,581
2025/854,87274,191
2025/956,48275,801
2025/1058,09277,411
2025/1159,70279,021
2025/1261,31280,631

現場が毎月計算し直してその都度価格を更新する工数や手間を考えると、余裕を持った高めの価格に設定する可能性は十分考えられる。

Google Pixel 8 128GB

機種変更一括59,472円と超激安に改定されて話題となったSoftBankのGoogle Pixel 8。

通常販売価格の大幅値下げをしても、1円は厳しそうだ。

年月1年返却
実質価格下限
2年返却
実質価格下限
2024/1222,58947,382
2025/124,65549,448
2025/226,72151,514
2025/328,78753,580
2025/430,85355,646
2025/532,91957,712
2025/634,98559,778
2025/737,05161,844
2025/839,11763,910
2025/941,18465,976
2025/1043,25068,042
2025/1145,31670,109
2025/1247,38272,175

抜け道はあるのか

新ルールに則って今の仕組みを継続しようとすると、値上げは必至であることが分かった。

各キャリアに秘策はあるのだろうか。

個人的には、所有権の移転しない完全レンタル方式が思いつく。実際、auは購入前に試せるオンラインショップのレンタルサービスとして、Rentioでスマホを貸し出している。

抜け道の考案に定評のあるSoftBankには、新たな枠組みを期待したい。

一括価格は下がるかも?

前述のとおり、残価の算出方法が統一化されるため、実質価格を下げる手法としては定価を下げるほかない。

ゆえに、一括購入価格が安くなる副次的効果はあるだろう。ただし、SoftBankのようにそもそも端末のみでの販売を中止してくることも考えられる。

そうなれば、総務省が当初掲げていた“通信と端末の分離”には逆行する。ルールに雁字搦めになりすぎた結果、通信料の低廉化という目的を逸していないだろうか。

無意味な規制のいたちごっこは即刻中止すべきだと、今回の試算を通じてあらためて感じた。

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参考:
- 電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドライン(pdf)
- RMJ公表データ 平均買取額推移(pdf)

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Tek-Next(管理人)

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