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長期利用者特典と大容量プランを新設した「IIJmio」の戦略を紐解く【IIJmio meeting 35 レポート①】

2024年7月21日

2024年7月20日、IIJ本社にて「IIJmio meeting 35」が開催された。同イベントではIIJやメーカーの担当者が登壇し、モバイル・通信業界の現状について紹介するとともに、IIJmioで取り扱いのあるスマートフォンの実機展示が行われた。

本記事では、IIJが担当した「IIJmioアップデート情報」および「スマホ市況」の内容をもとに、筆者の所感と考察を書き連ねていく。

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※本イベントは登壇者の撮影・内容のメディア掲載が許可されています

事業法改正と長期利用者特典を新設した「IIJmio」

第一幕では「IIJmioアップデート情報」と題して、IIJ 堂前氏がIIJmioのスマホライナップや新規施策について報告した。

以下、枠線で記載した部分は登壇者の発言と資料を筆者が要約したものとなる。

IIJmioでは、2024年6月21日より順次、ギガプランを対象とした3つの特典を開始している。既存顧客向けの施策を開始した背景には、電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドライン改正がある。昨年12月に改正された同法では、IIJが規制の対象事業者から外れた。よって、今まで実施できなかった割引等ができるようになった。家族利用等の複数回線でも使いやすくしたいという狙いもあり、「家族割引」を2024年秋に標準サービスとしてスタート予定。加えて、「長期利用特典」を2024年冬開始予定。データ容量のプレゼントやSIM交換・再発行手数料の無料化、2回線目以降の初期費用割引を検討している。(IIJ 堂前氏)

電気通信事業法第27条の3等は、スマホの割引ルール等を定める法律および省令。2023年12月27日に新規制が施行され、割引等の上限額が原則44,000円に定められた。それまで広く展開されていた、高額スマホの「一括1円」等の消滅は記憶に新しい。IIJに関しては規制対象ではなくなり、より柔軟な施策を打てるようになった。筆者は当時より「MVNOが多様なキャンペーンをを打ち出す」と予想をしていたが、まさにそれが展開されている形だ。“端末割引による乗り換え獲得競争”に頼らない新しいインセンティブは、市場の健全化に一役買っていると言える。

MNPワンストップは非対応のケースもあり

MNP予約番号を必要としない事業者間の番号移行である「MNPワンストップ」についても語られた。

IIJmioでは、2024年3月26日より「MNPワンストップ方式」に対応した。ただし、手続きができないケースも存在するため注意が必要。一点目は、転出元がワンストップに非対応の場合。大手MNOは対応しているが、MVNOは未対応の事業者もある。二点目は、転出元で固定回線セット等の条件付きの割引が付されているケース。三点目は、店頭申込の場合。申込みしたにもかかわらず手続きが進まない場合、従来型のMNP予約番号の取得が必要。(IIJ 堂前氏)

筆者は携帯電話を複数契約しており、世間一般の方々よりも高頻度でMNPを行っている。確かに、予約番号の取得・管理は手間であり、乗り換えの障壁となっているのも事実だ。比較的安価なMVNOがワンストップ方式に対応すれば、心理的なスイッチングコストの削減にも繋がると考えられる。

自分自身も最近、「予約番号発行中のため解約ができない」という経験をした。ワンストップ方式が標準化した暁には、より自由でストレスフリーな携帯ライフを送れるだろう。

大容量プランの新設と一部増量

IIJmioは30GB以上の大容量プランを新設した。

2020年後半から総務省が掲げる「通信料金の値下げ」で低廉化した各社の料金だったが、2022年以降は反動により料金の見直しが始まった。経済圏での縛りを条件とするなど、総じて値上げの傾向がある。実施した調査では、20GBプラン契約者で20GB以上利用している回線数が年々増加している。このような背景から、30/40/50GBのプランを新設するに至った。(IIJ 堂前氏)

堂前氏が述べた通り、近年MNOとそのサブブランドでは金融サービスを含めた経済圏への囲い込みが加速している。ahamoの登場によって単純化したと思われた料金プランが、再び複雑化しているのだ。

そんな中、中~大容量プランを競争力のある価格で打ち出してきた意義は大きいと思う。大手のオンラインブランド(ahamo,LINEMO)と無制限の間を埋めるようにして登場した30/40/50GBのプランは、決してニッチとはいえない“ちょうど良い”を提供している。大手が真似できないレンジと価格をうまく攻めてきた印象だ。

家族3人で60GB使う場合、20GB×3人=月額合計6,000円となるが、50GB+5GB+5GBとすることで5,880円に抑えられる。差は少額かもしれないが、上手く使って欲しい。(IIJ 堂前氏)

こうした裏技的な手法が使えるのも、価格体系が細分化されているからこそだ。

第一幕の「IIJmioアップデート情報」を通じ、法改正による市場環境の変化が、新施策を展開する大きなファクターとなったことが分かった。IIJとしては追い風となっている現状において、調査内容に基づいた戦略を着実に、納得感のあるプランやキャンペーンに落とし込んでいる印象だ。

スマホ市況と端末ラインナップ

2つめのトークセッションでは、「スマホ市況について」というテーマで、デバイス事業推進室の永野氏がプレゼンを行った。

取り巻く現状としては、SIMフリー創成期と比べ端末の品質が向上している。買い替え頻度は2年~4年に低下している一方、実質レンタルプランの登場により利用期間が再び2年に固定化するサイクルが生まれてくる。また、歴史的な円安により本体価格が値上がりしている。デバイスの選び方も多様化し、コスパの考え方が大きく変わった。

特に今年、ミドルスタンダートと、ハイエンドスタンダードの差が大きくなった。性能差の開きも出ており、価格も2倍以上違う。その溝を埋めるべく、よりコスパを感じられるミドルハイのエリアを開拓している。(IIJ 永野氏)

数年前は、ミドルは5万円~・ハイエンドは12万円~というような価格が一般的だった。しかし近年、諸要因による全体的な価格上昇により、フラッグシップに至っては20万円を超える端末も珍しくなくなった。フラッグシップ/ハイエンドは、カメラ性能が売りの「Xiaomi 14 Ultra」や、折りたたみスマホなど、明確な価値を感じられるプレミアム帯が牽引している。ただし、特異な性能を求めないボリューム層にとっては選択肢が狭まっているとも考えられる。

こうした現状の中で、7~10万円前後のミドルハイクラスが存在感を示すというのは必然とも言える。筆者が実際にSnapdragon 7系搭載のミドルスマホを使った感想としても、以前のような性能不足を感じる場面は少なかった。

各メーカーの力の入れ方を見るに、ミドルハイが新たなトレンドになる日も近いかもしれない。

IIJmioでは、Nothing Phone (2a)やAQUOS R9、motorola edge 50 pro等を取り扱いしているとのこと。

こうして一覧で見ると、スマホラインナップの充実さが改めて実感できる。IIJmioが機種の面でもあらゆる層に最適な選択肢を用意することで、利用者層の拡大を目指す戦略を読み取れる。

(IIJmio meeting 35のレポートは、別記事に続きます)

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Tek-Next(管理人)

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