Apple Vision Proの視覚的大画面を活かしてYouTube動画を視聴したいと思う方は多いだろう。
記事執筆時点(2024年8月)ではYouTubeの公式アプリがリリースされておらず、ブラウザ経由でアクセスする必要がある。
そのため、筆者がサードパーティーアプリを探していたところ、動画プレイヤー「Theater」を発見。まるで映画館に居るような感覚で動画を視聴でき、非常に良かったので紹介しよう。
“映画館風”YouTubeプレイヤー「Theater」
Sandwich Visionが開発するApple Vision Pro専用の動画プレイヤー「Theater」。
YouTubeの視聴を主な目的として作られているが、ローカルの動画再生やWebストリーミングも可能だ。
アプリ自体は無料で、YouTube視聴を含むフル機能のアンロックで600円課金する形となる。
映画館に入ってみる
アプリホームから、どの環境に入るか選択する画面が出るが、現時点では3つのうち「Primary Theater」のみリリースされている。「Eagle Theater」と「Screening Room」は準備中。3つめのホームシアターもなかなか楽しみだ。
「Primary Theater」に入ってみると、中規模の劇場のような座席が広がっている。
スクリーンショットでは伝わりづらいが、本当にシアターさながらの環境で、これだけでも一味違った雰囲気を味わえる。
動画を再生
シークバー隣のアイコンをタップし、YouTubeのブラウザ版インターフェースを呼び出す。
好きな動画を選択すると、自動的に動画部分だけが大きなスクリーンで再生される仕組みだ。視聴中に別の動画をブラウズできるのが良いところ。
もちろんGoogleアカウントでのログインもできる。レコメンドや普段使いのプレイリストも利用可能だ。
ちなみに、YouTube Premiumのキューによる自動再生は機能しなかった。
座席は固定ではなく、前後左右9つの位置へ移動できる。個人的には、見下ろす形で視聴できる後列がおすすめ。斜めからも意外とアリかも。
また、館内の明るさをコントロールし、椅子部分の目立ち具合を調整できる。より没入したい時は暗めにしたほうが良いだろう。
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音響効果が凄い
「Theater」で特筆すべきは、音響効果だ。
本編の音に包みこまれつつ、カーペットが足音や声を吸音する“映画館特有のあの感じ”が、見事に再現されている。
席の移動時はもちろん、顔が向いている方向に応じて聞こえ方が変わるヘッドトラッキングが、リアリティに拍車を掛けている。AirPods Pro(第2世代)のノイズキャンセリングとの併用で、さらに優れた空間オーディオを体感できた。
このアプリに限らず、Apple Vision Proの音響技術は本当に凄いので、是非一度試してみてほしい。
イマイチな点
「Theater」を使って感じたイマイチな点は以下のとおり。
- 影部分の光が若干遅れる
- 上の方に画面を移動できない
- 他のVODサービスは非対応
影部分の光が若干遅れる
スクリーンの下の部分に、動画に合わせた光の反射が再現されるのだが、それが0.5秒くらい遅れるのが少し気になった。
上の方に画面を移動できない
「映画館」なので当然といえばそうなのだが、正面かつ垂直にしか画面を配置できない。
筆者は寝ながらApple Vision Proで動画を観ることも多いが、そういった用途には不向き。
他のVODサービスは非対応
YouTube以外の動画サイトやVODサービスには非対応なのが、非常に惜しいポイントだ。
「Streaming Video Playback」からインターネット上の動画のURLを指定できるのだが、ABEMA等のストリーミングサービスはうまく読み込めなかった。
ちなみに、iCloud Driveやファイルアプリから自分の動画を観ることは可能。
シアターで観たいコンテンツが多いのは、YouTubeよりもNetflixやAmazon Prime Videoだと思うので、それらへの対応に期待したいところだ。
Apple TVの「映画館」と比較
Apple純正の「Apple TV」アプリにも類似機能が備わっている。というか、寧ろコッチから着想を得たのかもしれないが。
席を移動できる点や、映画館風の音響効果はどちらも変わらず。
視聴体験自体は大差ないが、「Theater」の方が座席がある分、よりリアルだと感じた。周りのオブジェクトひとつでここまで変わることに、素直に驚き。
Apple Vision ProでYouTubeを観るにあたって、「Theater」は決定版アプリと言えるだろう。
映画館を擬似体験できるという意味で、YouTube公式アプリがリリースされた後も積極的に使いたいアプリだ。
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「リアルの映画館が無くなる」が現実味を帯びている
筆者がApple Vision Proを購入してから約1ヶ月半。
3D映画といったVRならではのコンテンツが不足しており、やや持て余し気味になっていた。
「Theater」を使い、既存のコンテンツでも、(擬似的な)視聴環境の工夫次第でいかようにも化けること実感し、Apple Vision Proの新たな価値を発見できた。
たったの60万円で“持ち運べる映画館が買える”と考えれば、安い買い物とすら思えてこないだろうか。
「リアルの映画館が無くなる!」なんて、2024年時点ではトンデモな予想に聞こえるかもしれないが、いざ体験してみると意外と現実味がある話かもしれないと思った。「余暇時間はバーチャル空間に入る」が当たり前になる未来は、もうすぐそこなのかもしれない。